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史料確認 特集

台中にはなぜ太陽餅の店がこれほど多いのか?「太陽堂」の名前をめぐる争いと老舗閉店後の三つの「その後」

自由路にずらりと並ぶ「太陽堂」。本家はどこなのか?崑派の麦芽餅から始まった70年の歴史、商標をめぐる法廷闘争、2012年の老舗閉店後の系譜を整理し、ラードとバターの好みに応じた購入ガイドを収録。

台中の自由路二段を歩くと、わずか数十メートルの間に「太陽堂」「太陽餅」「老店」と書かれた看板がいくつも連なっています。初めて台中を訪れた人が必ず抱く疑問――「一体どれが本物・本家なのか?なぜ同じ名前のお菓子屋がこんなに密集しているのか?」

この街で70年以上愛されてきた甘い銘菓の背景には、伝統の崑派(こんぱ)の技を極めたひとりの菓子職人、街を巻き込んでブームを巻き起こした「太陽堂」、誰にも独占できなかった名前、そして2012年に老舗が突如閉店した後のドラマチックな連鎖反応がありました。

1. 太陽餅(タイヤンビン)の起源:まず麦芽餅があり、「太陽」は後から

台中市政府文化局の資料によると、太陽餅はかつて「泡餅(パオビン)」や「麦芽酥餅」と呼ばれていました。清朝末期に神岡・社口の林振芳一族が開いた製菓の流派「崑派」がその源流です。名職人の**魏清海(通称・阿明師)**が崑派のパイ生地技法で伝統の麦芽餡餅を改良し、薄くサクサクのパイ皮と柔らかな麦芽餡の原型を完成させました。

続いて登場するのが、社口林家の林紹崧と妻の林何秀眉です。1953年に林紹崧が「太陽堂」を創業して魏清海を総職人長として招き、お菓子の名を正式に「太陽餅」と命名。火災による移転を経て、1956年に自由路二段23号に新店舗を構え、自由路の黄金時代が幕を開けました。

なぜ「太陽」と名付けられたのかについて、文化局の記録は「由来は定かではない」としています。丸く焼かれたパイの中央に押された赤い印が朝日に見えたという説や、日本統治時代の日の丸を連想したという説など諸説あります。

2. なぜ台中に「太陽堂」と太陽餅の店がこれほど多いのか

公的記録と地方史調査から、主に4つの理由が挙げられます。

  1. 「太陽餅」は普通名詞であり、独占登録できなかった:製品名自体が商標登録できなかったため、誰でも自由に製造・販売が可能となり、結果として台中全体で百花繚乱の技術競争が生まれました。
  2. 職人の独立と暖簾分け:魏清海の弟子や一族が各地で独立。義子と三男が阿明師老店太陽堂を開き、孫が魏清海太陽餅老店を創業。自由路23号で育った職人たちも次々と独立しました。
  3. 交通結節点と車内販売文化:1950〜60年代、高速バス「金馬号」や台湾鉄道の特急列車で女性乗務員が太陽餅を車内販売し、全台湾へ名声が一気に広がりました。
  4. 自由路の集積効果:旧市役所や台中駅に近い自由路二段に店が集まり、相乗効果で巨大な土産物ストリートが形成されました。

3. 「太陽堂」の看板争い:先に使った店 vs 先に登録した店

「太陽餅」という名前は誰でも使えましたが、「太陽堂」という屋号をめぐっては熾烈な争いが生じました:

  • 自由路二段23号(林家の太陽堂)➔ 最初に使用した元祖:林紹崧夫妻が創業。古き良き職人気質ゆえに商標登録をしていなかったため、2代目の林義博氏が後年訴訟を起こしたものの敗訴。
  • 自由路二段25号(雷家の太陽堂老店)➔ 最初に商標登録した店:隣の25号を構える雷家の太陽堂(1954年創業)が、台湾で初めて「太陽堂」の文字と向日葵のマークで正式に商標登録を取得。
  • その他の太陽堂:阿明師老店、太陽堂老舗、新太陽堂などがそれぞれ師匠の血統や技を掲げて共存しています。

つまり、「最初にお店を開いて名前を使った店」と「最初に法的に商標を取得した店」が異なるという歴史的背景が、旅行者を迷わせる最大の要因です。

4. 2012年の閉店後:ひとつの老舗、三つの継承

2012年5月12日夕方、自由路二段23号の店頭に突如「5月13日をもって営業を停止する」との赤い貼り紙が出され、後継者難から60年の歴史に幕を下ろしました。そして同年8月、店主の林義博氏が逝去。しかし、その技術と精神は今も受け継がれています:

  • 顔水龍のひまわりモザイク壁画の伝説:老舗の象徴だったのが、台湾の巨匠芸術家・顔水龍が手掛けた巨大モザイク壁画。戒厳令下、向日葵が政治的連想を招くとして、初代店主は壁画を守るため25年間もの間、板で封印し隠し続けました。1989年の解厳令で再び日の目を見たこの壁画は、文化財として人々の記憶に刻まれています。
  • 「新太陽堂」の再出発:閉店後、元台中市議らが旧店の職人を集めて再興を図り、現在は自由路二段51号で「新太陽堂」として伝統の味を伝えています。
  • 職人たちが立ち上げた「23號太陽餅店」:旧23号の熟練職人と従業員たちが技術の断絶を惜しみ、三民路一段191号に「23號太陽餅店」を開業。手ごねパイ皮と昔ながらのラード餡を守り続けています。

5. 太陽餅の選び方:ラードかバターか、好みで選ぶ

好みのタイプ 選び方・特徴 掲載商品(公式価格)
昔ながらの味・ラード使用 伝統の手折り薄層パイ
何十層ものサクサク皮と、しっとりした麦芽餡
23號太陽餅店 伝統原味 10個入(NT$350、ラード)
新太陽堂餅店 太陽餅 12個入(NT$360、ラード)
自由路の老舗巡り 自由路二段の有名店
昔ながらの製法を守るランドマーク
太陽堂老店25號 伝統太陽餅 10個入(NT$380)
太陽堂老舗 原味 16個入(NT$592)
阿明師老店 太陽餅 10個入
ラード不使用・ミルク風味 バター・生クリーム仕立て
ポロポロ崩れにくく、ベジタリアン対応
陳允寶泉 太陽餅 10個入(NT$350)
俊美食品 太陽餅 10個入(NT$350、乳菜食)
聯翔餅店 招牌太陽餅 10個入(NT$450、卵乳菜食)
嘉味軒 鮮奶太陽餅 10個入(NT$460)
デザインパッケージ・ギフト モダンな台湾土産
美しい小包装や全国コンテスト金賞
日出 原味太陽餅 小包パッケージ 8個入(NT$400、乳菜食)
如邑堂 太陽餅 伝統オリジナル(6個入 NT$360、ラード)
変わり種・新感覚 タピオカミルクティー風味
もちもちタピオカ餡が入った創作系
一福堂老店 タピオカミルクティー太陽餅 8個入(NT$320)

💡 美味しく食べるポイント

  • 伝統の「泡餅」の食べ方:1950年代、台中では大きめのお椀に太陽餅を入れ、熱湯や温かいミルク、杏仁茶を注いでトロトロにふやかして食べるのが庶民の栄養食でした。
  • オーブンで温め直す:150℃のトースターで3〜5分温めると、焼きたての香ばしさと層のサクサク感が甦ります。
  • 絶対に冷蔵しない:冷蔵庫に入れると麦芽糖が固まります。直射日光を避けて常温で保存してください。
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